セキュリティカメラは、住宅、商業施設、産業施設のセキュリティシステムにおいて重要な要素となっています。多くの業界レポートは、2030年までにアプリケーション別のイメージセンサー出荷量において、セキュリティカメラが携帯電話に次いで2位になると予測しています。技術の進歩に伴い、設置の容易さや柔軟性から、ワイヤレスのバッテリー駆動カメラへの移行が進んでいます。しかし、これらのカメラが直面する大きな課題の一つに、消費電力があります。セキュリティカメラは離れた場所に設置されることが多いため、バッテリーの頻繁な交換や充電が負担になる場合があります。これはマルチカメラシステムではさらに困難になります。バッテリー寿命を延長し、メンテナンスの頻度を減らし、カメラを長期間稼働させるには、効率的な電力管理が不可欠です。
カメラで主に電力を消費するコンポーネントには、メインプロセッサー、暗い場所で使用される赤外線LED、そしてイメージセンサーがあります。イメージセンサー自体がシステム全体の基盤となる主要なデータ源なので、センサーは常時、フル稼働している必要があります。適切な設計を行えば、センサーにデバイスそれ自体だけでなく、カメラシステム全体の消費電力も削減する機能を搭載できます。バッテリー駆動セキュリティカメラの消費電力を最適化するための非常に効果的な手法の一つは、最近オンセミのセンサーに導入された、ウェイクオンモーションという機能です。このブログでは、ウェイクオンモーション技術の動作原理と消費電力を大幅に削減する能力について説明します。
バッテリー駆動カメラにおける消費電力の課題
バッテリー駆動のセキュリティカメラには、柔軟な設置場所、低い設置コスト、可搬性など、いくつかの利点があります。しかし、これらの利点は遠隔地に設置されたカメラでバッテリーの再充電や交換が必要になるトレードオフを伴います。頻繁なバッテリー交換や再充電は、特にアクセスが制限された場所では面倒な作業になります。従来のバッテリー駆動カメラは、停止時間なしで連続して動作するため、かなりの電力を消費する可能性があります。多くのセンサーには動きを検知する機能がなく、スケーラブルな低電力状態も存在しないので、そのような動きの検知と分類はメインプロセッサーが担います。この状況では、センサーとプロセッサーの両方が絶えず電力を消費しています。
この課題に対処するために、オンセミは同社のHyperlux LP（低消費電力）およびHyperlux LHイメージセンサーファミリーにウェイクオンモーション機能を導入しました。ウェイクオンモーション技術により、カメラは超低消費電力状態で動作し、動きが検知された場合にのみフルに起動します。このアプローチのため、アイドル期間中のカメラの消費電力が大幅に減少し、バッテリー寿命が延びます。
ウェイクオンモーションの動作原理
ウェイクオンモーションは、動きがないときにはイメージセンサーを低解像度、低フレームレートの事前検知モードに保持します。このモードでは、フル稼働時に必要な電力の1/100未満しか消費しないため、カメラは実質的にスリープ状態になります。センサーは動きを検知すると、割り込みを通じてシステムを起動し、プロセッサーに画像を送ります。プロセッサーは、その物体に対してフル解像度、高フレームレートのモードに切り替えて映像の取り込みと処理を実行すべきかどうかを判断します。
以下に、ウェイクオンモーション動作時の主要ステージを示します。
1 . Pre-Detect State（事前検知状態）：センサーは最適化された超低消費電力、低解像度、低フレームレートのモードになり、動きの兆候を検知しながら最小限の消費電力で動作します。さらに電力の削減が必要な場合は、センサーをスタンバイ状態にすることも可能です。その場合、センサーはパッシブ赤外線（PIR）が動きを検知したときにだけ、超低消費電力モードに移行します。
ウェイクオンモーション機能は、16x9グリッドによってさらに強化されます。このグリッドにより、エンドユーザーやプロセッサーは動きを検知する領域をセンサーに指示できます。これによって後述する誤検知が減少します。
2 . Motion Detection（動きの検知）：視野内で動きを検知すると、センサーは割り込みを生成してイメージシグナルプロセッサー（ISP）またはシステムオンチップ（SoC）にアラートを送ります。ISP/SoCは、その動きとアプリケーションの関連性を検証します。例えば、人が近づいてくる動きと、風で木が揺れている動きを区別する、などの関連性です
3 . Full Activation（フルアクティベーション）：動きに関連性がある場合、イメージセンサーとカメラの処理システムがフルに稼働して、高解像度の映像を撮影し、必要に応じてユーザーやセキュリティシステムにアラートを送り、さらにローカル不揮発性メモリーに映像を保存します。
4 . Return to pre Detect（事前検知状態への復帰）：映像が撮影され、それ以上、動きが検知されなくなると、システムは次の動きが発生するまで、低消費電力の事前検知モードに戻ります。
バッテリー駆動カメラにおけるオンセミのウェイクオンモーションの利点
ウェイクオンモーションは、バッテリー駆動セキュリティカメラに以下のような多くの利点をもたらし、長期間に及び効率的な監視システムが必要な用途に理想的なソリューションとなります。
1. バッテリテリー寿命の伸長
バッテリー駆動カメラの業界トレンドとして、180日間の充電サイクルを達成することが目標とされています。また、メーカーによっては1年もの連続稼働を目指す動きも見られます。オンセミのウェイクオンモーションは、この目標達成に向けた一歩となるもので、必要なバッテリーメンテナンスの頻度を最小限に抑えます。
ウェイクオンモーションは、動きがないときにはカメラを低消費電力状態に保持することで、バッテリーのエネルギーを節約し、カメラの稼働サイクルを延長します。さらに、メインプロセッサーはスタンバイモードに移行でき、センサーから動きを示す割り込みが送られてきた場合にのみ起動します。これによってシステムレベルでの電力削減効果が増します。
2. 品質低下を伴わない性能の最適化
通常、フル解像度およびフレームレートでの動作が必要となるのは短い時間だけです。そのためセンサーはほとんどの時間、低消費電力の事前検知状態を保持することができます。カメラはアイドリング中は超低消費電力モードで動作しますが、動きを検知すると素早くフル稼働に切り替わります。これにより、システムはセキュリティカメラの画像ストリームの品質を損なうことなく、必要なときはいつでも、鮮明で解像度の高い画像を撮影できます。この機能は、住宅や事業所の出入り口、産業施設の制限区域周辺など、高い信頼性でタイムリーな監視が求められる用途にとって非常に重要です。
3. 誤アラームの低減
モーション検知システムでよくある問題の一つが、揺れる木や小動物など、関係のない動きによって生じる誤報（Fales Alarms）です。オンセミのウェイクオンモーションシステムは、センサーが重要なイベントと背景の動きを区別できる高度な機能を備えており、無関係な動きを排除して誤アラームを減らし、本当に重要なイベント発生時のみシステムが起動するようにします。
住宅オーナーや企業にとっての意義
住宅オーナーにとって、オンセミのウェイクオンモーションを搭載したセキュリティカメラが、安心感と利便性を提供します。バッテリー寿命が延びたことで、ユーザーは頻繁な再充電を心配する必要がなくなり、ホームセキュリティ対策として『設置したら後は放置』が可能となります。玄関、裏庭、私道など、どこを監視するにも、これらのカメラは継続的なメンテナンスを必要としない、効率的な監視を可能にします。
企業や産業施設にも大きな利点があります。商業施設や産業施設では、セキュリティカメラは建物の外壁や天井の高い場所など、アクセスが困難な場所に設置されることがよくあります。バッテリー交換の頻度を減らすことは、人件費を節約するだけでなく、カメラが長期間にわたって稼働し、信頼性を維持することにもつながります。この点は、安全性、盗難防止、そしてコンプライアンスのために継続的な監視を必要とする企業にとって特に重要です。
セキュリティシステムの低消費電力ニーズに対応した設計
バッテリーで駆動するセキュリティカメラの消費電力を最適化することは、効率的で長期間持続する性能を確保する上できわめて重要です。オンセミのウェイクオンモーション技術は、低消費電力と高品質な監視のバランスを図る実用的なソリューションを提供します。ウェイクオンモーションは、バッテリー寿命を延長し、信頼性を向上させることで、より柔軟かつ費用対効果の高いワイヤレスセキュリティカメラの導入を可能にし、最新のセキュリティシステムにとって価値のある追加要素となります。
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