December 04, 2025

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電気自動車(EV)、再生可能エネルギーシステム、AIデータセンターにおける電動化の拡大により、電力システムへの圧力が増大しており、より高い効率、実装面積の削減、低温動作が求められています。電力密度の向上とシステムの小型化が同時に要求されることで、深刻な熱ボトルネックを生み出します。これは今日の電力システム設計者が直面している本質的な課題です。世界市場ではシリコンカーバイド(SiC)技術の採用が加速していますが、熱設計が制約要因となるケースは依然として多いのが実情です。従来のパッケージングソリューションでは、高電力SiCアプリケーションにおいて、スイッチング性能と熱効率の間でトレードオフが必要な場面が少なくありませんでした。

こうした背景のもと、新しいパッケージングソリューションが、熱管理と効率化を実現しています。

電動化の課題

パワーディストリビューションボード(PDB)はすでに熱的限界に近い数値で動作していることが多く、パワースイッチからの余剰な熱を基板側に逃がす余地はほとんどありません。

一般的に熱性能が比較的高いことで知られるMOSFETパッケージは、D2PAK (TO-263-7L)とTO-247-4Lの2つです。ただし、実装密度が高くなると、どちらも明確な制限があります。

  • TO-247-4L :容易にヒートシンクにねじ止めし、十分な放熱経路を確保できるため、良好な放熱性能を発揮します。しかし、狭いレイアウトでは、リード、導電パターン、そして周囲のコンデンサによって大きなスイッチングループ(すべての寄生インダクタンスの総和)が形成されることがあります。結果として、電圧のオーバーシュート、スイッチング速度の低下、スイッチング損失の増加を招くおそれがあります。
  • D2PAK : 表面実装デバイス(SMD)であるため、銅パターン配線が短く、スイッチングループが小さくなるため、寄生インダクタンスの影響を抑えることが可能です。D2PAKは、TO-247-4Lと比較してより高速なスイッチング速度を実現します。しかし、D2PAKはプリント基板(PCB)を通して放熱する必要があるため、ヒートシンクとデバイス間の熱抵抗が大きくなります。

設計者は、性能低下やシステムサイズの増大を招くことなく、妥協を強いられない新しい選択肢を必要としていました。そこで登場したのがT2PAKです。

T2PAKと他のパッケージとの違い

T2PAKは、オンセミの先進的なSiC技術と、最も広く採用されているトップサイドクーリング(TSC)パッケージ形式を組み合わせたものです。T2PAKは、優れた放熱性と卓越したスイッチング性能の両立を実現する独自設計となっており、TO-247-4LとD2PAKの利点を結合し、大きな欠点を持たない設計が特長です。

動画:T2PAKの解説:トップサイド冷却がSiC電源設計を変革(英語)

トップサイドクーリングの優位性

TSCにより、SMDパッケージでMOSFETとヒートシンク間での直接熱結合が可能です。これにより、配電基板から熱を逃がし、システムの冷却機構や金属筐体へ直接排出することができ、D2PAKで生じるPCBの熱ボトルネックを回避できます。主な利点は以下のとおりです。

  • 優れた熱性能 — ヒートシンクに熱を直接放散することで周囲動作温度を低減します。
  • 熱ストレスの軽減 — メイン基板から熱を逃がすことで、他の部品への熱ストレスを軽減してPCB温度を低く維持するとともに、製品の動作寿命の延長とシステム信頼性の向上に役立ちます。
  • 低寄生インダクタンス — 優れたスイッチング特性を持つNTT2023N065M3SNVT2023N065M3Sなどのデバイスは、非常に低いトータルゲート電荷量(≈74 nC)と出力容量(≈195 pF)を特長とし、信頼性向上と損失低減を実現しています。
  • 設計の柔軟性 — EliteSiCの優れた性能指数(FOM)とトップサイド冷却対応のT2PAKを組み合わせることにより、より小さな実装面積でより効率的なアプリケーションの設計が可能になります。
Figure 1: Specifications for automotive-qualified onsemi EliteSiC M3S MOSFETS in T2PAK package
図1:T2PAKパッケージにおける車載グレードのオンセミEliteSiC M3S MOSFETの仕様
Figure 2: Specifications for onsemi EliteSiC M3S MOSFETS in T2PAK package
図2:T2PAKパッケージにおけるオンセミEliteSiC M3S MOSFETの仕様

The T2PAK portfolio offers a wide range of options, including planned releases of 12 mΩ, 16 mΩ, 23 mΩ, 32 mΩ, 45 mΩ, and 60 mΩ parts for the 650 V and 950 V EliteSiC M3S MOSFETs.

T2PAK 製品仕様概要
  • 対応電圧:650 V / 950 V
  • オン抵抗:12 / 16 / 23 / 32 / 45 / 60 mΩ(計画含む)
  • 熱抵抗: 12 mΩ デバイスで RθJC ≈ 0.35 ℃/W(D2PAK より優秀)
  • 規格適合: IEC 60664-1 沿面距離規格(最短 5.6 mm)
  • 実装性: 液体ギャップフィラー、パッド、セラミック絶縁体に対応

市場への影響と用途

2025年、欧州、南北アメリカ大陸、およびグレーター・チャイナでT2PAKの世界規模でのサンプル出荷が実施されました。このパッケージは、要求の厳しい産業用および車載アプリケーションに最適です。

Figure 3: SiC MOSFETs in T2PAK package are ideally suited for solar and EV on-bard charging applications
図3:ソーラーおよびEVオンボード充電アプリケーションに最適なT2PAKパッケージのSiC MOSFET
電気自動車

T2PAKは、オンボードチャージャー(OBC)、ドライブトレインコンポーネント、EV充電スタンドなどのEVアプリケーションで、最も要求されることが多いパッケージです。OBCは通常、車両の液体冷却システムを利用できるため、TSCによってパワースイッチからの熱を熱伝導インタフェース経由でシステムに逃がすことができます。

スイッチンループの問題を解消するとスイッチング損失を軽減させることができ、寄生インダクタンスを低減し電力効率を大幅に向上させることができます。また、IECの沿面距離規格を満たすことで、メーカーの安全性に対する顧客へのコミットメントを強化できます。

産業・エネルギーインフラ

TSCパッケージは優れた熱効率により、太陽エネルギーシステムで急速に普及しています。T2PAKは、ソーラー発電変換やエネルギー貯蔵システム(ESS)などの新しい先進的なインフラ関連アプリケーションにおいて、理想的であることを証明しています。

ハイパースケールAIデータセンター

データセンターは、ラックマウント型AC-DC電源、DC-DC電源、配電ユニットに依存しています。ハイパースケールアーキテクチャ全体が、これらの配電ユニットへ容易にアクセスし、交換が可能なことを前提に構築されています。データセンターでは液体冷却が一般的になる中、T2PAK独自のトップサイド冷却はコールドプレート設計と高い親和性があります。ここでは、最も高温になるチップに直接取り付けられたサーマルインタフェースに沿って配置された流路内を、自由に流れるクーラントが循環し、高性能プロセッサーから熱を逃がします。最近の研究によれば、コールドプレート設計と液浸冷却を併用すると、温室効果ガス排出量を最大1/5削減する効果があるとされています。

熱の課題を克服することで、設計者はT2PAKを使用してより高い性能、高い信頼性、簡素化された熱管理を実現できます。T2PAKを採用することで、従来のディスクリートパッケージよりも高い電力密度を達成できます。 

T2PAKは次の用途にも適しています。

  • HV DC/DCコンバーター(車載および産業用)
  • オートメーションおよびロボティクス向け産業用SMPS(スイッチング電源)
  • 産業用ドライブおよび高効率DC-DCコンバーター

世界的な普及と今後の展望

電力システムの進化に伴い、将来の設計では厳しい効率およびサイズ要件を満たすために、トップサイド冷却への依存が一層高まるでしょう。オンセミは、最先端のSiC技術をT2PAKパッケージで提供することにより、このような変化に対応する準備ができています。

結論

電動化があらゆる産業を変革する中、オンセミのEliteSiC T2PAKは、高効率電力変換の新たな可能性を切り拓いています。T2PAK TSCパッケージのEliteSiC MOSFETは、電動化を戦略的に後押しするパッケージング技術の進歩を具体化するものです。従来のトレードオフなしに優れた熱性能、信頼性、設計の柔軟性を提供することにより、T2PAKは世界中の産業が直面するスペースと熱の制約を克服します。オンセミのT2PAKは広範な市場で利用可能であり、この重要な技術を広く活用できる環境が整っています。

詳細について

電動化が進むあらゆる分野においてポートフォリオの拡充が進むEliteSiC T2PAK製品の詳細をご覧ください。