低消費電力センサーインタフェース、高速データ取得、高精度計測といった用途において選択するアンプは、システムのシグナルインテグリティ信号完全性や全体的な性能を維持する能力に大きく影響する可能性があります。
さまざまなアンプの種類とアーキテクチャがある中で、アプリケーションに適したアンプを選ぶ方法を理解することが重要です。
課題:汎用アンプで多機能性とコストのバランスをとる
設計者にとってよくある課題は、特に超高精度が最優先要件でない場合に、幅広い信号処理に対して、十分な柔軟性とコスト効率が得られるコンポーネントを見つけることです。これは基本的な信号処理回路、各種車載サブシステム、バッテリー駆動デバイスで頻出します。
汎用オペアンプ(op-amp)は、低消費電力で信頼性の高い性能を提供することでこの課題に対処するように特別に設計されており、柔軟性とコスト効率が優先されるプロジェクトにとって優れた選択肢となります。例えば、PMOSベースの LM358などのデバイスが挙げられます。これらは長年にわたり業界でその永続的な価値が証明されてきた、実績のあるバイポーラデバイスです。CMOS汎用アンプの一例としては、さまざまな小型パッケージで提供されるNCS20072があります。
課題:ゼロドリフトアンプで精度と安定性の課題を克服する
わずかな誤差でも重大な結果を招く可能性があるアプリケーションでは、設計者は広い温度範囲と長時間の動作期間にわたって、非常に高い精度と安定性を維持するという重要な課題に直面します。このことは、医療機器、産業用計測、IoTアプリケーション、モーター制御フィードバックシステムなどの分野で特に重要です。
これらの厳しい要求に応えるために、以下のような専用アンプカテゴリーがソリューションを提供します。
ゼロドリフトアンプ
重要な課題は、温度変動や経年劣化によるオフセット電圧の固有のドリフトです。NCS21911などのデバイスに採用されているゼロドリフトアーキテクチャは、このドリフトを打ち消すように設計されており、環境変動に関係なく精度と長期安定性を維持します。
これらのアンプは、レールtoレール入出力機能や低静止電流などの特徴を備えていることが多く、要求の厳しいアプリケーションにおいて精度と電力効率の両方をさらに向上させます。加えて、優れた同相信号除去比(CMRR)は重要な特性であり、不要な同相ノイズを効果的に抑制します。これは、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)と接続して高品質なデータ取得を行う際にきわめて重要です。NCS21911の標準的なCMRRは4Vで130dBです。
課題:ダイナミック電力システムにおいて高精度の電流監視を行う
電流を正確に監視することは、パワーマネジメント、バッテリー駆動システム(スマートフォン、ノートブックコンピューター、電気自動車など)、車載安全診断をはじめとする多様なアプリケーションにおいて、それぞれに特有の課題が生じます。設計者は、広範囲のコモンモード電圧範囲にわたる電流を正確に測定し、同時に消費電力と部品表(BOM)コストを最小限に抑えるソリューションを必要求めとしています。
電流センスアンプはこれらの課題に対処するために特別に開発されています。
1:コモンモード電圧範囲
大きな課題は、シャント抵抗がグランドに接続されていないハイサイド構成での電流測定です。このため、一部のモデルでは最大40V、NCS7031/NCV7031(車載用)やNCS7041/NCV7041(車載用)といったモデルでは80Vにも達する、高いコモンモード入力電圧を処理できるアンプが必要になります。この機能は、ハイサイドとローサイド両方の電流センシングに不可欠であり、設計の柔軟性をもたらすとともに、ハイサイドアプリケーションにおける負荷短絡の検出を可能にします。
2:高精度と低オフセット
電流測定における精度は最重要です。これらのアンプは一般に、非常に低いオフセット電圧(例:Treoプラットフォームのゼロドリフトアーキテクチャでは最大±12 µV)を特徴とし、シャント抵抗両端のわずかな電圧降下でも正確な読み取りを保証します。この設計は、測定の完全性を維持しながら、シャントからの電力損失を最小限に抑えるのに役立ちます。
3:統合とコスト効率
基板スペースとBOMコストの継続的な削減要求は非常に重要です。一部の電流センスアンプソリューションは、ゲイン設定抵抗を内蔵しており、設計を簡素化し、外付け部品の点数を削減します。例えば、NCS214RやNCS(V)2167xといったデバイスがこの機能を提供しています。さらに、これらのデバイスは単方向または双方向の電流センシングをサポートでき、電流の流れが逆転する可能性があるバッテリー充電器のようなアプリケーションには不可欠です。
課題:先進のアンプ属性により普遍的な設計制約を克服する
電子設計には、特定のアンプタイプへの対応だけでなく、共通する大きな課題がいくつかあります。最新のアンプソリューションはそれらの課題を克服するために、以下の重要な属性を提供します。
1:過酷な環境における信頼性
多くのアプリケーション、特に自動車分野(先進運転支援システム(ADAS)、モーター制御、バッテリー管理システム)では、極端な温度環境や厳しい電気的条件に耐え得るコンポーネントが求められます。Treoプラットフォームでまもなく登場する一部のデバイスでは最大150°Cの動作温度をサポートしています。
AEC-Q100やPPAP対応などの車載グレード認定を取得することは、NCV210RやNCV333などのコンポーネントがこれらの厳格な信頼性要件を満たすことを保証するために不可欠です。
2:エネルギー効率
ポータブル機器、IoT、および産業システムにおけるバッテリー寿命の延長と消費電力の削減には、超低停止電流のアンプが必要です。オペアンプでは数十uA、コンパレータでは数nAという超低静止電流が求められます。Treoプラットフォームは315nA/チャネルという最小限の消費電力を、性能を損なうことなく実現します。
3: スペースの最適化
小型化は現代の電子機器において、常に求められる要求です。Treoプラットフォーム向けのCSP(チップスケールパッケージ)やuQFN(マイクロクワッドフラットノーリード)などの小型パッケージで提供されるアンプソリューションは、設計者が基板スペースを大幅に削減するのに役立ち、スマートフォンやウェアラブル電子機器などのアプリケーションには不可欠です。
4: 高速応答と制御
モーター制御や電力安定化のようなダイナミックシステムでは、高速信号処理が不可欠です。Treoプラットフォームでまもなく登場するコンパレータは、40 nsの高速伝搬遅延と高速過渡応答を特徴としており、システムの安定性と性能にとって不可欠な高精度でタイムリーな制御を可能にします。
アプリケーションの要求を満たすアンプの特性
電子設計で適切なアンプを選択することは、複雑な建設プロジェクトで特定の作業に適切な工具を選択することによく似ています。職人が専用工具を駆使し、繊細で困難な作業を正確かつ効率的に遂行するのと同様に、電子回路におけるユニークな課題に対処するために、特有の能力を持つさまざまなアンプアーキテクチャが設計されます。
幅広い汎用性、変動する環境でのピンポイント精度、電力システムにおける精密な電流監視が必要な場合でも、個別の設計課題を理解することで、エンジニアは高度なTreoプラットフォーム上に構築されたものなど、最新のアンプポートフォリオの専門的な特性を活用して、電子設計の構想を実現することができます。
オンセミのアンプに関する詳細やご質問は、販売代理店または営業担当者にお問い合わせください。
参考資料