自動車、産業、AIデータセンターなど多くの業界で電力需要が高まる中、エンジニアは厳しさを増す環境基準や効率に対する期待に応えながら高性能化を図るという、二重の圧力に直面しています。さらに、医療用ウェアラブルなどの小型・低消費電力機器の場合、市場の需要は急速に変化しており、パーソナルケア向上のためにインテリジェンスと機能の追加が求められる一方で、効率と機器コストは依然として重要な要素です。
このような進化を続けるニーズは、より優れたインテリジェンスとエネルギー効率を提供し、電力スペクトル全体にわたるアプリケーションの多様な要求を満たす、高度に統合されたパワーおよびセンシングソリューションを必要とします。
これらの重要な要件をサポートするのは簡単なことではありません。そのためオンセミは、期待される効率、統合、性能を実現するために特別に設計された、新しいアナログおよびミックスドシグナル・プラットフォームTreoを開発しました。65nmノード上にバイポーラCMOS-DMOS (BCD)プロセス技術と1~90Vの電圧範囲をサポートできる能力を備えたTreoプラットフォームは、オンセミのインテリジェントなパワーおよびセンシング技術の範囲を拡大し、次世代のパワーマネジメントIC、センサインタフェース、専用通信デバイス、信頼性の高い標準製品を提供します。
Treoプラットフォームとは?
Treoプラットフォームは、進化し続ける再利用可能なアナログ、デジタル、パワーIPビルディングブロックのセットで構成され、次世代のパワーマネジメントIC、センサインタフェース、通信デバイス、標準製品などを実現します。
自動車、産業、医療、AIデータセンターでの多くのアプリケーションにおいて、競争上の優位性は、最終製品の設計で半導体が実現する性能や高度な機能によって生み出されます。これが多くの企業の成功の鍵となるため、市場ではこれまで以上に高い性能、より洗練された機能セット、緊密な統合が求められます。Treoプラットフォームは、これをオンセミの次世代アナログおよびミックスドシグナル製品ポートフォリオに統合します。
このプラットフォームからすでに複数の製品が開発されており、電圧トランスレータ、LDO、マルチフェーズコントローラなどが現在サンプル出荷されています。一部は大量消費市場向けに開発され、その他は顧客向けに開発されたものです。
オンセミは2025年からこのプラットフォームを使用して、誘導型位置センサ、10BASE-T1Sイーサネットコントローラ、DC-DCコンバータ、マルチフェーズコントローラ、車載用LEDドライバ、回路保護IC、ゲートドライバなど、さらに幅広い製品を提供する予定です。
Treoプラットフォームで開発された製品は、米国ニューヨーク州イーストフィッシュキルにあるオンセミの世界クラス300mm製造施設で製造されます。この最新鋭工場は、65nm技術を駆使した製造が可能であり、車載認定およびITAR認定を受けています。
なぜ「Treo」か?
さて、「Treo」は「3」に関係する用語なので、このプラットフォームに「Treo」(トレオと発音)という名前が付けられた理由が主に3つあると想像できます。
- 「Tre」はスペイン語とイタリア語で「3」を意味し、バイポーラ、CMOS、DMOSを統合してアナログ、デジタル、電源ソリューションを統合する65nm BCDプラットフォームの中核を反映しています。
- また、「Tre」には「Tree」の意味もあり、プラットフォームの多くの技術「ブランチ」となる、幅広いアナログおよびミックスドシグナル製品ポートフォリオの構成を表します。
- スペイン語で「Treo」とは、帆船つまりプラットフォームと同様な機敏性と高い性能を備えた帆船に備わっている、特定タイプの帆を意味します。
BCD技術
Treo プラットフォームは、以下の3種類のトランジスタを1チップ上に集積したBCD技術に基づいています。
- アナログ機能用のバイポーラトランジスタ
- デジタル処理用のCMOS(相補型金属酸化膜半導体)トランジスタ
- 電力および高電圧素子用のDMOS(二重拡散金属酸化膜半導体)トランジスタ
他にもBCDプラットフォームは存在しますが、オンセミのTreoプラットフォームは、現在利用可能な他のどのプラットフォームよりも広い電圧範囲(1~90V)を提供する点がユニークです。高度な65nmプロセス技術により、消費電力の削減と併せてかつてないレベルの統合が可能になります。
このプラットフォームは、事前に開発されたアナログ、デジタル、電源設計モジュールまたはIPブロックを使用して、さまざまなアプリケーションに対して、信頼性が高く一貫性のある基盤を提供するように設計されています。これらのIPブロックは、構成を無限に組み合わせて新しいTreo製品を開発したり、オンセミのエンジニアのために設計プロセスを簡素化したりするのに役立つため、高度な統合と品質を保証しながら、製品開発を加速させることができます。
Treoプラットフォームの利点
Treoプラットフォームは、基盤となるBCD技術に固有の優れた柔軟性により、お客様にさまざまな電力、センシング、通信製品ポートフォリオを迅速に提供できます。
このプラットフォームはツリーのように、各種技術の「分岐」を可能にし、それぞれがプラットフォームの利点を活用した個別製品ファミリを表します。このプラットフォームはモジュール式なので、お客様がオンセミから入手できる製品の幅が拡大し、これまでよりも迅速に新たな市場要件に対応できます。
固有の高精度アナログ機能により、Treoプラットフォームはエンドシステムでより高い性能レベルを発揮できます。例として、ADASシステムでの障害物検出機能の向上や、持続血糖測定(CGM)での測定精度の向上などが挙げられます。
Treoは比類のない動作電圧範囲を備えており、より多くの機能を1つのパッケージに統合できるため、設計の複雑さを軽減しサイズを縮小できます。さらに、高度なデジタル処理機能を内蔵することで、最終製品の統合レベルと機能性を向上させることが可能です。
Treoプラットフォームがもたらす価値
Treoプラットフォームは、複雑なアナログおよびデジタル信号処理機能を、MCUおよび共通のCMOS とバックエンドを備えたその他の複数の機能と統合し、IPが低、中、高電圧レベルで動作できるようにします。プラットフォームに組み込まれた高性能アナログ機能は、従来のアナログ方式よりも速い速度と改善されたマッチング性能を提供します。
Treoプラットフォームは、名前のとおり帆からインスピレーションを得て、性能と機敏性を考慮して設計されています。この哲学はプラットフォームの優れた熱性能に表れています。実証済み動作限界温度は175℃ で、一部のモデルは200℃まで許容できます。これは競合ソリューションを最低でも25℃と大幅に上回り、直接チップ上で大きな熱放散が可能になるため、部品表(BOM)コストの削減につながります。
結論
Treoプラットフォームにより、今後はアナログおよびミックスドシグナル・チップの迅速な開発が可能になるでしょう。Treoプラットフォーム上で構築された電圧トランスレータ、超低消費電力AFE、LDO、超音波センサ、マルチフェーズコントローラ、シングルペア・イーサネットコントローラなどの初期製品ファミリは、現在サンプル出荷中です。オンセミは2025年の1年間を通して、高性能センサ、DC-DCコンバータ、車載用LEDドライバ、回路保護IC、コネクティビティなど、システムレベルの価値をさらに高めた幅広い製品ファミリを提供していきます。
Treoプラットフォームの詳細についてはonsemi.com/treoをご覧いただくか、サンプルをご注文ください。