今日のテクノロジー主導の世界では、電子機器の相互運用性が重要です。自動車のADAS(先進運転支援システム)からデータセンターや産業オートメーションに至るまで、最新の電子回路はさまざまなコンポーネント間で高速通信をサポートする必要があります。
高速ロジックレベル・トランスレータ(電圧トランスレータまたはレベル・シフタと呼ばれることもある)は、現代の電子機器に不可欠なものであり、異なる電圧レベルで動作するコンポーネント間のシームレスな通信を可能にします。しかし、今日のソリューションの多くが最新の技術的要求に対応できないため、新たなソリューションが必要です。そこで オンセミのTreoプラットフォームとその新しいレベルのトランスレータ製品ファミリが登場し、今日の技術的要求に正面から取り組めるように設計されています。
現代の電子機器におけるレベル・トランスレータの必要性拡大
歴史的に、初期のCMOS技術や伝統的なトランジスタ-トランジスタロジック(TTL)に対する標準として5Vが一般的に使用され、組み込み電子回路でのデバイスインタフェースは比較的簡単でした。しかし、現代の電子機器は、一言でいえば、より少ないものでより多くのことを行う方向にあり、デバイスが小型化する一方で、電力効率や性能に対する期待は大きくなっています。
これらの要求は、多くの集積回路(IC)が40nmから10nmや7nmといった小さなノードに移行し、システム電圧が5Vから低下したことを意味します。
デジタルICでは消費電力は電源電圧の2乗の関数であると考えると、システム電圧の低下は、エネルギー消費を最小化することにより電力使用量の低減に貢献します。トランジスタを0Vのローステートから1.2Vまたは1.8Vのハイステートにスイッチングする場合も、0Vから5Vへの遷移よりも、エネルギー消費が減少します。
さらに、低電圧コンポーネントは発熱が少なく、熱管理上の懸念が軽減されるだけでなく、より小形のトランジスタを使用できるようにもなります。これにより、設計者はダイサイズを縮小したり、トランジスタを追加したりして、性能を向上させることができます。
今日のトランスレータの課題の克服
従来の電圧変換は、多くの場合はディスクリート・トランジスタや基本的なCMOS ICに依存していました。しかし、このような確立された方法では、センサや制御システムのような低電圧コンポーネント間のリアルタイムかつ正確な変換が不可欠な自動運転車など、現代の電子機器の要件に追従するのは容易ではありません。
T30LMXT3V4T245およびT30LMXT3V4T244レベル・トランスレータは、65nm BCD半導体プロセス技術に基づく新しいTreoプラットフォームを利用する最初の製品ラインの一つです。これらの製品は最新の市場需要に効果的に対応するように設計されています。
比類のない速度
最新のロジックレベル・トランスレータは、遅延やシグナルインテグリティの問題なしに、異なる電圧レベルで高速双方向通信を行うための高速プロトコルを扱える必要があります。100 Mbps SPIなどの高速インタフェースの同期を維持するために、市販されている多くのレベル・トランスレータはフィードバック・クロックを使用していますが、これは CPU/GPIO と消費電力の増加につながります(図 1)。
T30LMXT3V4T245は、最大400 Mbpsのデータレートをサポートし、SPIなどの高速プロトコルをスムーズに扱うことができます。高速での正確な電圧レベル変換を通じて、シグナルインテグリティを保証し、フィードバック・クロックを不要にすることで、設計の複雑さを軽減し消費電力を低減します。オンセミの最新レベル・トランスレータが提供する速度は、ギガビット・イーサネット内蔵のニーズが高まっている複雑な自動車および産業用設計にも役立つでしょう。
1Gbpsの速度を達成するには、通常RGMIIインタフェースが必要であり、ダブルデータレート(DDR)信号で125 MHzクロックを使用し、250 Mbpsで4ビットのデータを同時に送信します。しかし、このような高速信号変換をサポートし、イーサネット物理層(PHY)とメディアアクセスコントローラ(MAC)間で異なる電圧レベルを扱うには、高性能のレベル・トランスレータが不可欠です(図2)。
T30LMXT3V4T245の性能は、高速ギガビットネットワークに依存する産業オートメーションおよび車載ADASシステム向けに設計されており、電圧変換範囲が広くても自律タスクを実行する際に、迅速で信頼性の高い性能を発揮します。
Treoプラットフォームを支えるオンセミのBCDプロセスの重要な利点は、低動作電圧での卓越した性能です。多くの5Vデバイスは、技術的には1.8Vなどの低電圧をサポートできますが、速度が大幅に低下することがよくあります。同様に、3.3Vデバイスは1.8Vでは良好ですが、1.2V以下では効率が低下します。
Treoプラットフォームはこれらの低電圧範囲において優れており、1.8Vや1.2Vなどの低電圧でも高速変換速度を実現します。そのためT30LMXT3V4T245 は、低電圧サポートとともに速度や信頼性も必要とするギガビット・イーサネットなどの高データレートアプリケーションに最適です。
高信頼性動作の達成
Treoの65nm BCDテクノロジーは、T30LMXT3V4T245が-40oC~125oCで動作可能なことを意味します。これにより、厳しい環境下でも長期間にわたって性能を維持することができます。
Treoプラットフォームは、効率的な電力制御を提供し、戦略的な抵抗および容量管理による寄生の影響を低減します。そのアーキテクチャには、電磁干渉(EMI)を低減し、耐久性を向上させる高度な絶縁技術が組み込まれています。
さらに、Treo固有の低ノイズ設計と精密な低電圧CMOS技術により、現在のソリューションと比較して、ロジックレベル間のスイッチングをより正確かつ低ノイズで実行できます。これはノイズが増幅されて信号が劣化する可能性が高くなる1.2V~5Vのようなワイドレベルの変換で特に重要です。
結論
電子機器がますます複雑になり相互接続が増える世界において、信頼性が高く効率的な電圧変換の重要性は、どれだけ強調してもし過ぎることはありません。
オンセミの画期的なTreoプラットフォームを活用することで、T30LMXT3V4T245とT30LMXT3V4T244はロジック変換技術における新たな標準を設定し、現在および将来の電子システムに比類のない速度、エネルギー効率、熱耐久性を提供します。
詳細情報と関連リソースについては、Treoプラットフォームのソリューションページ をご覧ください。Treoの機能の詳細については、ホワイトペーパー「High Temperature Analog and Mixed-Signal Solutions Enabled by the Treo Platform 」と「High Performance, Precision Analog Capability Enabled by the Treo Platform」でご確認ください。